おだやかな休日。
コーヒーを飲みながら、小説を読みたくなる午後があります。
あたらしい小説ではなく、いつか読んだ懐かしい小説。
適当なページをひらき、適当なシーンから読みはじめます。
なんなら、
ページを開かなくたっていいんです。
擦り切れた本のカバーを眺めながらコーヒーを飲む。
それだけで、じゅうぶん間が持ちます。
そんなぜいたくな午後の使い方。
あらすじで味わう外国文学
本棚をみると…
『あらすじで味わう外国文学』という本があります。
以前もこのブログでチラッと紹介させてもらいました。
数々の有名な外国文学をほんの数ページに圧縮して紹介した本です。
いくつ覚えているか
ふと
この本に載っている作品のうち、過去に読んだものでちゃんと内容を覚えている作品はどのくらいあるだろうか…
と疑問に思いました。
いざ!
確認してみます。
ハムレット
シェークスピアの『ハムレット』です。
読んだことは覚えていますが細かいあらすじは忘れました。王子の話ですよね。「生きるべきか死ぬべきか」っていう有名なセリフだけは覚えています(笑)
ロビンソン・クルーソー
デフォーの『ロビンソン・クルーソー』です。
覚えています。無人島に漂着して生活したり、そのあとは大陸横断の大冒険をしたり。大陸横断の大冒険の部分は、実際に読むまでぜんぜん知らなかったので意外でした。ロビンソン・クルーソーってこういう話なんだぁ!って驚いたものです。
チャタレイ夫人の恋人
D・H・ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』です。
内容はほとんど覚えていません。ご婦人が浮気する話。そのくらいの記憶です。
ライ麦畑でつかまえて
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』です。
主人公の少年が家出する話。そんな感じの記憶です。語り口がとても特徴的だったのは覚えています。
あ! いま突然思い出した!
そうだ! ぼくはこの本で泣いたんです。
主人公の少年が妹(たぶん)に夢を語るシーンがとても感動的でした。
ぼくは子どもたちの遊ぶライ麦畑で、子どもたちが崖から落ちたりしないように、危なくなったらつかまえてあげたい、それがぼくの夢なんだ。
…みたいなことを語るんです。その場面がすごく感動的で、ぽろぽろ泣きました。
ぼくはこれで作者のサリンジャーに興味を持ってナイン・ストーリーズ (新潮文庫)を読んだりもしました。
赤と黒
スタンダールの『赤と黒』です。
なんとな~く覚えています。
主人公の少年(青年?)がすごく野心家で出世をめざしてがんばる、みたいな話だったと思います。
ジャン・クリストフ
ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』です。
これは1巻しか読んでいない作品です。途中で読むのを止めたんですね。
だからといって面白くなかったわけじゃありません。
むしろ面白かった。すごく面白かった。
音楽家ジャン・クリストフの生涯を描いた作品です。
彼の子ども時代から物語が始まります。
そうそう!子どもの頃ってこんなふうに考えてたよね!っていう「子どもあるある」がいっぱいで楽しかった。
どうして読むのを止めたのかと言うと…
わかりません。
学生時代に読んだので、学生時代の気まぐれで止めたとしか。
異邦人
カミュの『異邦人』です。
なんとなくしか覚えていません。母親の死から物語がはじまること。殺人の動機をきかれて「太陽がまぶしかったから」と謎の動機を答えるシーンがあること。覚えているのはそのくらいです。
罪と罰
ドストエフスキーの『罪と罰』です。
これは長編小説ですよね。こんな長編なのに、あまり覚えていない…。
とほほ。
主人公の男性が「罪と罰」について独自のへりくつを展開する話だったような…。
でもなんか最後のほうにいい感じのシーンがあって感動したような…。
あいまいすぎる記憶です(汗
戦争と平和
トルストイの『戦争と平和』です。
これも長編ですね。これはわりと覚えています。
ナポレオン戦争をロシアの側から見た話ですね。
登場人物がやたら多かったので、紙にメモしながら、それをしおり代わりにして読みました。
情景や風景を正確に描写しているのはもちろんなんですが、それプラス、人の心の機微や、ちょっと暗黒なイヤな内面なども精密に書き出しているのが面白かったです。
一番印象に残っているシーンは、アンドレイ公爵がナポレオンとの戦いでボロボロになって倒れて、空を見上げる場面。
あの空の青さ。感動しました。
ほかにも印象的なシーンがいくつも思い浮かびます。
この小説はけっこう覚えているほうかも知れません。
カラマーゾフの兄弟
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』です。
これも『罪と罰』『戦争と平和』にひきつづき、長編ですよね。
兄弟がいて、父親が事件性のある死に方をして、さあ犯人はだれだ!という話です。
三男のアリョーシャのシーンで、なにか感動的な一場面がありました。ああ、このシーンいいなぁ、と思ったのを覚えています。
どんなシーンだったかな(笑)
えーと、とにかく、アリョーシャと子どもたちのシーンなんです。
細かくは忘れましたが、感動したという記憶、その余韻だけは、心の奥に残っています。
若きウェルテルの悩み
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』です。
これはよく覚えている作品です。
ぼくが世界文学と呼ばれる作品を読んだのは、これが最初でした。
中学生の頃、本当はダンテの『神曲』にチャレンジしたんですけど、意味不明すぎて挫折したんです。
それで、みじかくて読みやすそうな『若きウェルテルの悩み』を読むことにしました。
そしたらこれが、すごく面白くて。
どんな話か簡単にいうと、友人の奥さんに恋をした主人公が自殺する話です。
前半がすごく楽しそうなんです。
新生活の楽しさ、恋の楽しさ。みずみずしくて詩的な描写が最高です。
これを書いたゲーテはドイツ最高の天才詩人といわれる人ですから、そりゃあもちろん描写は最高ですよね。
この作品でも泣きました。
心に深く深く刻まれた、思い出の作品です。
変身
カフカの『変身』です。
細かいシーンは忘れましたが…
主人公がある日突然、虫に変身してしまう話ですね。
雰囲気は覚えています。
ちょっと悲しい結末でした。
ガリバー旅行記
スウィフトの『ガリバー旅行記』です。
小人の国、空飛ぶ島、巨人の国、馬の国とかを冒険する話ですね。
かすかな、断片的な記憶です。
映画『天空の城ラピュタ』のモデルになったのが『ガリバー旅行記』の空飛ぶ島だと聞いて、読みはじめたような気がします。
本の内容は忘れていい
以上が、『あらすじで味わう外国文学』に載っていて、ぼくが読んだことのあった本です。
記憶があいまいなものがけっこうありますね(汗)
でも、いいんです。
自分では忘れたつもりでも、あのとき考えたこと、心ふるえたことなど、読書で得たたくさんの財産は、きっと心の土壌として息づいています。
だから、忘れてもOKなんです。
と
自分を勇気づけるのでした。
おしまい。