ネタバレ「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の感想

こういう素敵な本を読んじゃうと、感想をどう書こうかためらってしまいます。

この魅力をちゃんと表現しなきゃって。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

けっこうネタバレ全開で感想を書いていきます。

 

ご了承ください。

 

内容を知りたくない方は、こちらからトップページに離脱してくださいませ。

 

では…。

 

ネタバレ感想です。

 

 

 

 

どんな本?

20歳の男女の恋のはなしです。

男の子の時間はふつう(過去から未来)に進みます。女の子の時間は、ふつうとは逆(未来から過去)に進みます。

かなしくてあたたかい恋愛小説です。

時間モノが好き

ぼくはタイムスリップものとかタイムパラドックスものが好きです。

『ドラえもん』とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『タイムリープ あしたはきのう』とか、そういう時間の仕掛けがある物語が好きなんです。

この小説も時間の仕掛けがある物語として興味を持って読みはじめました。

恋愛小説

読んでみると、はじめのうちは時間ものの要素があまり感じられませんでした。

でも、おもしろく読めました。

「あっ。これはおもしろい小説だな」

ふだん恋愛小説を読まないぼくでも、入り込むことができました。

すずやかでキュンとする恋愛の雰囲気が何かなつかしかった。

それに…

時間ネタが目的で読みはじめたぼくに対して、時間ネタを出さずにここまで引き込んでくれるって、すごいです。

文章に「あっ。これはおもしろい小説だな」っていう安心感があります。

散りばめられたヒント

でも…

このときからもう時間ものとしての要素は物語の各所に散りばめられていたんです。

背表紙に書いてある「彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。」という説明文は、そういうことなんです。

ネタバレ

感想を書く都合上、くわしくネタバレをさせていただくと…。

男の子の時間は、ふつうに進んでいきます。

女の子の時間は、逆なんです。未来から過去に進みます。

つまり…

男の子にとっての「明日」は、女の子にとっての「昨日」なんです。

はじめて手をつないだ日

だから…

男の子にとって「初めて手をつないだ日」は、女の子にとって「最後に手をつないだ日」なんです。

女の子にとっては、その日を境に、もう手をつなげない関係になっていくんです。

はじめての手料理

男の子にとって「初めて料理をつくってもらった日」は、女の子にとって「最後に料理をつくってあげた日」なんです。

呼び方

男の子にとって「初めて名前で呼んだ日」は、女の子にとって「最後に名前で呼んでもらった日」になります。

女の子にとっては、それ以降はどんんどん他人行儀になっていきます。

うれし泣きじゃなかった

読み終わった今、小説を思い返せば…

女の子は初めて手をつないだときに泣きました。

はじめて料理をつくったときに泣きました。

そして、はじめてお互いの呼び方を変えたときに泣きました。

 

男の子も、読者のぼくも、それはうれし泣きだと思っていました。

でも違った。

 

悲しくて泣いていたんです。

女の子にとっては、それがもう最後だから。

泣きました

ぼくは41歳の男です。

それが恋愛小説を読んでボロボロ泣きました。

 

いまを大切に生きようって思います。

今いる人との時間を大切にしようって。

あたたかい

悲しいばかりじゃないんです。

読み終えたとき、ほのかな、力強いあたたかさがあります。

 

ここまで書いて来て、だいぶネタバレをしたように思えますが…

じつはまだまだ書いていない重大な秘密が、この小説にはあります。

そこに本当の感動があります。

 

読んでよかった。

ひさしぶりに、心のすみずみに沁みとおるような小説でした。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

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