詩人の谷川俊太郎さんが若い頃に書いた文章をあつめた本です。
10代の頃ノートに書き残した文章もたくさん載っています。なんか貴重です。
わけもなく悲しくなります。それが心地いいです。
わけもなく悲しい。そんなふうに思うときは、自分で気づいていないだけで、ちゃんと悲しくなるだけのわけが胸の中にある。ずっと昔、詩人の銀色夏生さんが何かの本でそんなことを書いていたような気がします。
だとしたら…
ぼくらは、悲しみを直視したくないから「わけもなく」という言葉で身を守っているのかも知れませんね。
その一方で…
本当にわけもなく、本当に自分ではわからない悲しみが、静かな地響きみたいに心を襲うことがあります。それは、忙しく動いていたら感じそびれてしまうくらい、かすかな地響きです。
悲しくなってもいい。それもあり。
わけを直視できないときは、しなくてもいい。それもあり。
悲しくなりたいときは、悲しむことが自分にとって気持ちいい。
わけを直視できないときは、直視しないことが自分にとって気持ちいい。
だれでもみんな…
笑っていても、泣いていても、直視していても、目をそらしていても…
それが今の自分の心にとって一番自然だからそうしている。
まずはそういう自分を受け入れて、味わって、かわいがって、それから次へ。
いまのこの瞬間の自分と向き合って、味わい尽くしてこそ、次に進めるんですね。
そんなふうに思える本です。