20世紀は大規模な企業合併の時代となった。
1901年。モルガン邸。
鉄鋼王「こんにちは~」
息子モルガン「あなたは?」
鉄鋼王「鉄鋼王のカーネギーです」
息子モルガン「おぉっ。はじめまして」
鉄鋼王「遊びに来たよ」
息子モルガン「え、遊びに?」
鉄鋼王「うん。おじゃましま~す」
息子モルガン「でも僕たち、初対面ですよね?」
鉄鋼王「気にしない気にしない」
息子モルガン「なんか、あやしいなぁ……」
鉄鋼王「あやしくないよ」
息子モルガン「絶対なんか企んでますよね?」
鉄鋼王「さ、遊ぼう。プレステやろう」
息子モルガン「あやしいから、帰ってくださいよ」
鉄鋼王「プレステやろう、プレステ」
息子モルガン「ファミコンしかありません。帰ってください」
鉄鋼王「ファミコンも大好き」
息子モルガン「本当ですか?」
鉄鋼王「うん。ソフトは、何あるの?」
息子モルガン「『ポパイの英語遊び』」
鉄鋼王「……。やりてぇ~」
息子モルガン「絶対ウソですよね?」
鉄鋼王「ホントだよ」
息子モルガン「どんなゲームか知ってます?」
鉄鋼王「も、もちろん」
息子モルガン「言ってみてください」
鉄鋼王「えーと。ポパイが……英語で……遊ぶゲーム……?」
息子モルガン「お、知ってますね~」
鉄鋼王「でしょ? やろう♪」
息子モルガン「どうぞ、あがってください」
鉄鋼王「うん。……あ、もう時間だ。帰らなきゃ」
息子モルガン「もうですか?」
鉄鋼王「ばいば~い」
息子モルガン「あ、落し物ですよ」
鉄鋼王「ばいば~い」
息子モルガン「ちょっと待ってください」
鉄鋼王「なにさ?」
息子モルガン「なんか、紙が落ちましたよ」
鉄鋼王「落としてないよ。ばいば~い」
息子モルガン「わっ。これ、鉄鋼会社の株じゃないですか!」
鉄鋼王「おれのじゃないよ」
息子モルガン「絶対あなたのポケットから落ちました」
鉄鋼王「君のだよ。君の。はい決まり。ばいば~い」
息子モルガン「あ、ちょっと……」
鉄鋼王は去った。
秘書「どうかしたんですか?」
息子モルガン「あ、秘書くん」
秘書「ん? 何です、その紙」
息子モルガン「えーとね、鉄鋼会社の株みたいだね」
秘書「株!?」
息子モルガン「鉄鋼王さんがくれた」
秘書「まずいですよ」
息子モルガン「どうして?」
秘書「株を受け取ったということは……」
息子モルガン「うん」
秘書「その会社の所有者になったということです」
息子モルガン「お。ラッキー」
秘書「ラッキーじゃないです」
息子モルガン「なぜ?」
秘書「シャーマン反トラスト法を忘れたんですか?」
息子モルガン「あっ!」
秘書「巨大企業はボコボコにされるんですよ!」
息子モルガン「まずい……」
1901年。
モルガンは鉄鋼王カーネギーの会社を支配下におき、USスチールを設立。
USスチールは鉄鋼業界の65%を独占し、米国初の10億ドル企業となった。
鉄道会社「こんにちは。鉄鋼王のカーネギーさん」
鉄鋼王「やぁ。鉄道会社さん」
鉄道会社「どうですか、会社の調子は?」
鉄鋼王「ふふふ。それがね……」
鉄道会社「はい」
鉄鋼王「おれ、会社、捨てたさ」
鉄道会社「はっ?」
鉄鋼王「モルガンにあげちゃった」
鉄道会社「マジ? なんで?」
鉄鋼王「だって今、大企業なんて持ってたらさ……」
鉄道会社「はい」
鉄鋼王「いつ政府にボコられるかわからんしょ」
鉄道会社「たしかに」
鉄鋼王「だから、強引にモルガンに譲っちゃった。えへへ」
鉄道会社「なるほど」
鉄鋼王「君も、気をつけたほうがいいよ」
鉄道会社「僕もモルガンさんに吸収されちゃおうかなぁ」
鉄鋼王「うん。それがいいよ」
鉄道会社「じゃ、吸収されてきます!」
というわけで鉄道業界におけるモルガンの覇権は拡大した。
こうして、鉄道独占企業ノーザンセキュリティーズ社が誕生した。
息子モルガン「どうしよう……」
秘書「みんな、モルガンさんのとこに集まってきますね」
息子モルガン「大企業ボッコボコ法にひっかかってしまう」
秘書「シャーマン反トラスト法です」
息子モルガン「告発されるかな?」
秘書「ぎりぎりです。政府次第ですね」
息子モルガン「でも、よかった」
秘書「どうして?」
息子モルガン「今の大統領は、まだ優しそうでしょ」
秘書「今の大統領って?」
息子モルガン「マッキンリー大統領」
秘書「……」
息子モルガン「これでもしルーズベルト君みたいな人が大統領だったら、一発で告発されるね」
秘書「モルガンさん」
息子モルガン「?」
秘書「マッキンリー大統領は暗殺されました」
息子モルガン「え! いつ?」
秘書「今年(1901年)の9月6日に」
息子モルガン「それで、今は誰が大統領なの?」
秘書「ルーズベルトさんです」
1901年。セオドア・ルーズベルトがアメリカ大統領に就任した。
いよいよ、モルガンとルーズベルトの全面戦争が始まる。