戦国時代を舞台にした歴史小説です。主人公は斎藤道三です。
どんな話?
あるホームレス(のちの斎藤道三)がどんどん成り上がって一国一城のあるじになって、「斎藤道三ここにあり!」とほかの戦国武将たちを震え上がらせるお話です。
悪役の出世物語
戦国時代に大出世した人物としてまず思い浮かぶのは豊臣秀吉です。
秀吉の出世物語が明るく軽妙なのに対して、斎藤道三のばあいは、ダークヒーローというか悪役のにおいがぷんぷん漂って迫力があります。
異名はマムシ
さきほどサラッと「悪役」と書きましたが、歴史にはご存じのように悪も正義もなくて、小説を書く作家のさじ加減ひとつです。
その上でいうと、斎藤道三は「美濃のマムシ」と恐れられたそのキャラクターから悪役のイメージが強いんです。
それが魅力でもあります。
ホームレスが一国一城のあるじを目指す
もうずいぶん昔のことになりますが、この本とはじめて出会ったときのことは、よく覚えています。冒頭からめちゃくちゃ血がたぎりました。
ひとりのホームレスが一国一城のあるじを目指すところから物語ははじまります。第1章「開運の夜」から引用します。
世は、戦国の初頭。――
「国主になりたいものだ」
と乞食はつぶやいた。
ひとがきけば狂人とおもうだろう。が、乞食はおおまじめである。事実、この夜のつぶやきは、日本史が永久に記憶しなければならなくなった。
こういうの、好きなんです。
いったいどんな方法で成り上がっていくんだろう!?ってワクワクします。
あの手この手で這い上がる
『国盗り物語』はそのワクワクにしっかり応えてくれる小説です。
お坊さんになってみたり、油売りの商人になってみたり、武士になってみたり。あの手この手で成り上がっていく斎藤道三の姿は悪役ながら目が離せません。
道三は何人いた?
斎藤道三は何もないところからスタートして、たった一代で国を奪った男として有名です。
でも…
じつはその国盗りは親子二代にわたるものだった、という説もあります。
つまり、道三は2人いたという説です。
この小説は、道三ひとり説です。一代で成り上がっています。
ちなみに、道三ふたり説は『ふたり道三』という小説で描かれています。
斎藤道三が好き
ぼくはきっと斎藤道三という戦国武将が好きなんです。
好きといっても、人格的に好きとか、同じクラスにいたら友達になりたいとか、そういうことではなくて、遠く離れた時代の(自分と利害関係のない)戦国武将として好きなんです。
戦国時代のゲーム(信長の野望)をするときも、斎藤道三を愛用していた時期があります。
学園祭前夜の高揚感
戦国時代を舞台にした小説やドラマなどでよく取り上げられるのは、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康らが活躍した時期です。
その時期は、上杉謙信もいますし、武田信玄もいますし、教科書に出てくるような太字の出来事がいっぱい起こります。戦国時代の中でもわりとメジャーな時期です。
戦国時代に、まだ織田信長という革命児が登場する前です。
『国盗り物語』にどことなく漂う、この「信長前夜」感も好きなんです。どう表現していいのかわかりませんが、斎藤道三の人生には、学園祭の前夜のような不思議な高揚感があります。