楠木のアパートを包囲した幕府軍は……。
足利「突撃~!」
部下「オーッ!」
足利「楠木を捕らえろ~」
部下「あれれ?」
足利「どうした?」
部下「部屋には誰もいません」
足利「む。本当だ」
部下「逃げられたみたいっすね」
逃走中の楠木兄弟のようす。
楠木「いや~。ギリギリ脱出」
七郎「あぶなかったね」
楠木「でもさ、幕府軍が来るって、なんでわかった?」
七郎「ビデオ屋で会員証見せた時点で、ヤバイと思ったの」
楠木「そっか」
七郎「で、どうする、これから」
楠木「おれの秘密基地に来る?」
七郎「そんなのあるの?」
楠木「内緒だよ。やたら内緒ね」
七郎「うん。どこ?」
楠木「あんね、金剛山」
楠木兄弟は金剛山に向かった。伝説が、そこで生まれる。
ここは隠岐。(天皇が幽閉されている島)
天皇「やぁ。見張りくん」
見張り「こんにちは。天皇さん」
天皇「きみ、おれを見張ってるの?」
見張り「はい。この島から逃げないように」
天皇「ねぇ、そこにある船さ、本州行き?」
見張り「そうですよ」
天皇「乗っていい?」
見張り「ダメですよ~」
天皇「なんでさ」
見張り「あの船に乗ったら、島から脱出できちゃうじゃないですかぁ」
天皇「おれね、じつは、天皇じゃないんだ」
見張り「今さらそんな……」
天皇「一般の客だから、乗っていい?」
見張り「証拠は?」
天皇「え」
見張り「天皇じゃないっていう証拠、あります?」
天皇「証拠っていうか、ほら、おれ、どことなく品がないしょ」
見張り「う~ん」
天皇「あ、じゃあ、変な顔してあげるか?」
見張り「変な顔?」
天皇「天皇って普通、変な顔しないしょ」
見張り「そうですね」
天皇「いくよ。見ててね」
見張り「うわっ!(汗)」
天皇「ね。放送禁止でしょ」
見張り「は、はい」
西暦1333年閏2月。後醍醐天皇は隠岐を脱出した。
鎌倉幕府のようす。
家臣「あ、そういえば、幕府さん」
幕府「ん」
家臣「あの話、ききました?」
幕府「あの話って?」
家臣「楠木正成を取り逃がしたって話」
幕府「うそぉ? 聞いてない」
家臣「逃げられたんですって」
幕府「なんで早く言わんのさ!」
家臣「だって怒るしょ。言いづらくて」
幕府「怒るけどさー。もー」
家臣「それと、言いづらいついでで、なんですけど」
幕府「まだあるの?」
家臣「天皇関係で、ちょっと」
幕府「なに?」
家臣「天皇が脱出っぽいこと、したそうです」
幕府「脱出っぽいこと?」
家臣「はい」
幕府「脱出ではないの?」
家臣「いや、脱出したんですけど」
幕府「じゃあ『っぽい』いらんしょ」
家臣「脱出ってそのまま言ったら、怒られると思って」
幕府「そんなのいいから、早く教えてよ!」
家臣「怒られた……」
鎌倉幕府滅亡まで、あと3ヵ月。