ここは反乱の第二基地、赤坂城。
兵士「あー、楠木さん」
楠木「はい」
兵士「手ぇあいてる?」
楠木「え」
兵士「ちょっとさ、玄関の靴ならべといてくれない?」
楠木「靴?」
兵士「みんな脱ぎ散らかしてグチャグチャなのさ。頼むね」
楠木「……」
その夜。
楠木正成は弟の七郎(楠木正季)に電話をかけた。
楠木「おれ、今、反乱軍にいるんだけどさ」
七郎「えっ。兄ちゃん、そんなことやってるの?」
楠木「就職、なくて」
七郎「大変だね」
楠木「一応、第二基地のリーダー」
七郎「すげぇ」
楠木「でさ、ちょっと手伝ってくんねぇかな」
七郎「反乱を?」
楠木「人手が足りなくて」
七郎「そんなに足りないの?」
楠木「だっておれ、リーダーの仕事できてないもん」
七郎「そっかぁ」
楠木「今のおれ、玄関の靴ならべ係だからね」
七郎「リーダーのメーンの仕事がそれ?」
楠木「うん」
七郎「すぐ鎮圧されるね、すぐ」
楠木「でしょ。だから手伝ってよ。友達もガバッと誘ってさ」
七郎「わかった」
こうして七郎(楠木正季)とその仲間たちが赤坂城に合流した。
赤坂城での、楠木正成と七郎の会話。
楠木「参加、サンキュー」
七郎「しかしまたムチャなこと始めたね」
楠木「おれ、これで英雄になるから、よろしく」
七郎「敵の数は?」
楠木「10万くらいだってさ」
七郎「で、兄ちゃんの兵力は?」
楠木「1000人ちょいかな」
七郎「確実にボロ負けでしょ」
楠木「ふふふ。ここで負けるようじゃ、英雄にはなれないよ」
七郎「すごい自信」
楠木「作戦、聞きたい?」
七郎「うん」
楠木「戦いはまず、敵の心理を読むことだよ」
七郎「というと?」
楠木「敵は、ここには攻めてこない」
七郎「なんで?」
楠木「この赤坂城って、一応は第二基地とかいってるけど……」
七郎「うん」
楠木「正直、ちっぽけなどうでもいい基地でしょ」
七郎「そうだね」
楠木「敵は、こんな小さい城よりも、第一基地のほうを優先して攻めると思うんだよね」
七郎「第一基地って、天皇さんのいるとこだよね」
楠木「うん」
七郎「で、作戦ってのは?」
楠木「敵が第一基地を攻撃してるすきに、おれは……」
七郎「うん」
楠木「敵の背後にこっそり回りこんで、ドカーン!と攻める」
七郎「すげぇ!」
楠木「敵、きっとびびるよ」
七郎「総崩れだね」
楠木「ね、完璧でしょ?」
七郎「完璧」
楠木「孔明って呼んで。ザ・孔明って呼んで」
七郎「あえて主力部隊をオトリにするあたり、大胆でいいし」
楠木「でしょ? でしょ?」
七郎「でもさ」
楠木「うん」
七郎「敵がいきなりこっちに攻めてきたら、どうするの?」
楠木「……」
そこへ仲間の兵士が現れた。
兵士「兵士です。ご報告します」
楠木「うん」
兵士「敵が第一基地を包囲しました」
楠木「そうか。読みどおりだ」
兵士は去った。
楠木「ほらね~」
七郎「すげぇ。兄ちゃんの言ったとおりだね」
楠木「だからおれ天才なんだって~」
七郎「じゃ、さっそく敵の背後に回り込む?」
楠木「うん。敵が第一基地に夢中になってるすきにね」
兵士が現れた。
兵士「兵士です。ご報告します」
楠木「うん」
兵士「敵軍は第一基地をあっさり攻略し……」
楠木「え」
兵士「天皇さんを捕虜にし……」
楠木「え」
兵士「ものすごいスピードでこちらに向かってます」
兵士は去った。
七郎「兄ちゃん、やばいじゃん」
楠木「う、うん」