ここは大阪。秀吉の家のチャイムが鳴った。
秀吉「はーい。どなた?」
北条家の父「北条家の父です」
秀吉「あ、どうも」
北条家の父「こんにちは(笑顔)」
秀吉「こ、こんにちは」
北条家の父「笑顔がかたくてすいません」
秀吉「い、いえ…」
北条家の父「先日は電話で失礼しました」
秀吉「実際に会うのははじめてだね」
北条家の父「はい」
秀吉「関東からはるばる来たの?」
北条家の父「来ちゃいました」
秀吉「まあ、どうぞ入って入って」
北条家の父「今日は息子のことでお詫びに来ました」
秀吉「まだぼくをボコボコにするって言ってます?」
北条家の父「言ってますね。朝昼晩、言ってます」
秀吉「マジっすか…」
北条家の父「ご迷惑をおかけしてすいません」
秀吉「一応、戦国時代はもう終了したんですよ」
北条家の父「ニュースで見ました」
秀吉「だから、これからはルールを守って平和にお願いしますね」
北条家の父「でも、ぶっちゃけた話、しちゃっていいです?」
秀吉「え。うん。いいよ」
北条家の父「日本って今までずーっと戦国時代だったでしょ」
秀吉「うん」
北条家の父「だから、みんなの中に甘えがあると思うんです」
秀吉「甘えっていうと?」
北条家の父「ちょっとくらいルール無用でも、まあ許されるでしょうっていう甘え」
秀吉「はぁ、なるほど」
北条家の父「そういう甘えをなくすには、見せしめが必要だと思うんですよ」
秀吉「見せしめ?」
北条家の父「平和を乱す人間には罰を与えますよ、っていう見せしめ」
そこへ兵士があわててやってきた。
兵士「秀吉さん、事件です!」
秀吉「どした?」
兵士「北条家の息子さんが、打倒秀吉の旗をあげて暴れだしました」
秀吉「えぇっ!」
西暦1589年。
北条家は上野国(こうずけのくに)の名胡桃城(なくるみじょう)を奇襲攻撃し、奪取した。
北条家の父「きっと僕へのプレゼントのつもりなんですよ」
秀吉「プレゼント?」
北条家の父「ひと様のお城うばって、父親へのプレゼントだなんて。もう戦国時代は終わったっていうのに、バカな子でしょ」
秀吉「……」
北条家の父「どんなバカな顔してるか、もっとよく見ておけばよかった」
秀吉「え、どういう意味?」
北条家の父「秀吉さん…」
秀吉「はい」
北条家の父「というわけで、僕、切腹しますね」
秀吉「え!?」
北条家の父「北条家は罰を受けなくちゃなりません」
秀吉「なにも切腹なんかしなくても…」
北条家の父「平和を乱すものはこうなる、っていうガツンとした見せしめが必要でしょ」
秀吉「いや、」
北条家の父「大丈夫。きちんと死にますよ」
北条家の父は笑った。
秀吉「ずるいよ。こんなときだけ笑顔うまくて」
北条家の父「そのかわり、できれば息子を助けてあげてください」
惣無事令にそむいた責任をとり、北条家の父(北条氏政)は自害した。