西暦1582年の後半。柴田勝家の息子は長浜城に入り、秀吉ににらみをきかせていた。
秀吉「まいったな~」
兵士「完全に監視下におかれてますね」
秀吉「このままだとおれ、いつ柴田ファミリーに滅ぼされてもおかしくないよね?」
兵士「はい」
秀吉「よし、こうなったら…」
兵士「どうするんです?」
秀吉「徹底的に柴田ファミリーのご機嫌をとろう」
兵士「でもそれだと秀吉さんのプライドが…」
秀吉「あ、雪」
兵士「本当だ。寒い季節になりましたね」
秀吉「キラリーン。ひらめいた!」
兵士「なんです?」
秀吉「柴田さんの息子さんって、長浜城に入ったばっかりで、城のこと、まだよくわかんないよね」
兵士「でしょうね」
秀吉「ストーブの場所、教えてあげようかな」
兵士「は?」
秀吉「長浜城のストーブってさ、わかりづらいところにしまってあるしょ」
兵士「ああ、ガレージの奥の奥でしたね」
秀吉「その場所を教えてあげるの」
兵士「親切ですね」
秀吉は長浜城に電話をした。
柴田勝家の息子が出た。
柴田の息子「はい。柴田です」
秀吉「秀吉です」
柴田の息子「おお。なした?」
秀吉「柴田さんは長浜城に引っ越してきたばっかりだから、その城のことよくわからないですよね?」
柴田の息子「え?」
秀吉「ぼくは詳しいです。必要ならいつでも伺いますよ」
柴田の息子「そ、それはもしかして…」
秀吉「はい?」
柴田の息子「『長浜城の構造は知り尽くしてるから、いつでも攻略してやる』ということか」
秀吉「え、いや…」
柴田の息子「たしかにこの城はもともとおまえの城だったもんな」
秀吉「そうですけど」
柴田の息子「でも来るなら来てみろ。おれには親父(柴田勝家)がついてる」
秀吉「わかってますよ」
柴田の息子「何かあったら親父がすぐに北陸から助けに来てくれるぞ」
秀吉「そうじゃなくて、ぼくが心配してるのは雪のことです」
柴田の息子「雪…」
秀吉「さっきから雪が降りはじめたでしょ」
柴田の息子「しまった! 雪がふれば北陸にいる親父は馬で移動できない!」
秀吉「まあ、そんな話はいいんですけど」
柴田の息子「つまりおれは孤立無援か。むむ。これじゃ勝ち目はないな」
秀吉「なんの話ですか」
柴田の息子「やむをえん。降参する!」
秀吉「えっ」
秀吉は柴田勝家の息子を懐柔し、戦わずして長浜城を取り戻した。
秀吉の手腕に人々は驚嘆した。