モルガン財閥のゆるい伝記 最終話 丘のある野原で

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モルガンとルーズベルトの会話。

ルーズベルト「モルガン君。ありがとう」

息子モルガン「こちらこそ」

ルーズベルト「君はアメリカだけじゃなく、世界を救った」

息子モルガン「たまたまです」

ルーズベルト「助けてもらって言うのもなんだけど……」

息子モルガン「はい」

ルーズベルト「本当は、個人がそんな力を持つべきじゃない」

息子モルガン「やはり巨大企業による市場独占には反対ですか」

ルーズベルト「というより、正直な話をすると……」

息子モルガン「はい」

ルーズベルト「君がいるうちはOKだと思う」

息子モルガン「え?」

ルーズベルト「君は最高神ジュピターと呼ばれてるよね」

息子モルガン「そう言う人もいますね」

ルーズベルト「でも、君は神様じゃない」

息子モルガン「もちろん」

ルーズベルト「いつか、必ず死ぬ」

息子モルガン「はい」

ルーズベルト世界経済が、一個人の力量をあてにしちゃダメだと思うんだ」

息子モルガン「……」

ルーズベルト「だって、その人はいつか、いなくなっちゃうんだから」

息子モルガン「はい」

ルーズベルト「君が果たしてくれた役割は、本当は、もっと公的な機関が果たすべきだと、おれは思う」

これが、のちの連邦準備制度(日本でいう日本銀行のような、中央銀行制度)の構想に発展していく。

ルーズベルト「モルガン君」

息子モルガン「はい」

ルーズベルト「今度、鬼ごっこでもしよう」

息子モルガン「いいですね」

ルーズベルトあのとき君が言っていたように、丘があって、タンポポが咲いてる野原で」

息子モルガン「わかりました」

ルーズベルト「そこって、君が一番幸せだった時代をすごした場所だったよね?」

息子モルガン「あの頃も、いい友人がたくさんいましたから」

ルーズベルト「いいね」

息子モルガン「あの頃は、何も考えずに、ただ普通に安心できてた気がします」

ルーズベルト「たとえば、武器を持たなくても?」

息子モルガン「はい。武器を持たなくても」

ルーズベルト「そういう世の中をさ、ふたりで作れたらいいかもね」

息子モルガン「素敵ですね」

ルーズベルト「20世紀は始まったばかりだ」

息子モルガン「はい」

ルーズベルト「これから、どうにでも変えられる」

1913年3月31日。深夜。

ルーズベルトのもとを、モルガンの秘書が訪れた。

秘書「こんばんは。ルーズベルトさん」

ルーズベルト「君は?」

秘書「モルガンの秘書です」

ルーズベルト「こんな時間に、何か?」

秘書「モルガンが亡くなりました」

ルーズベルト「……」

秘書「それをお伝えしたくて」

ルーズベルト「……最期のようすを、聞かせてくれる?」

秘書「発熱があり、脈拍が高まって、しきりにうわごとを言っていました」

ルーズベルト「うわごと?」

秘書「夢を、見ていたのかも知れません」

ルーズベルト「夢か……」

秘書「はい」

ルーズベルト「一番幸せだったころの夢を、見ていたんだろうね」

秘書「それもあるかも知れませんね。でも……」

ルーズベルト「?」

秘書「未来を夢見ていた気もします」

ルーズベルト「未来を?」

秘書「はい。子供のころを思い出したり、未来を夢見たり、いろいろなことを思って死んでいったのかも知れません」

ルーズベルト「じゃあ、おれと鬼ごっこをする夢も、見てくれたかな?」

秘書「え?」

ルーズベルト「約束したんだよね。いつか、モルガン君が子供のころに遊んだ、丘のあるタンポポの野原で鬼ごっこしよう、って」

秘書「きっと、その夢も見ていたと思いますよ」

ルーズベルト「そうだと、嬉しいな」

秘書「その証拠に、うわごとで丘のことを話していました」

 

彼が死去したまさにその年、連邦準備法が制定された。

以後、一個人が世界経済に君臨することは、二度となかった。

記録に残っているモルガンの最期の言葉は、

「あの丘を登らなくちゃ…」といううわごとである。

モルガン財閥・完

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