モルガン財閥のゆるい伝記 第23話 理想

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ここはホワイトハウス。

政府の人1「大統領、ニュースです」

ルーズベルト「まさか、A社倒産?」

政府の人1「いいえ。逆です。持ち直しました」

ルーズベルト「え?」

政府の人1「これで世界は恐慌を脱しました」

ルーズベルト「そうか、よかった……」

政府の人1「もう何も心配いりません」

ルーズベルト「でも、どうして急にA社は持ち直したんだ?」

政府の人1「モルガンがA社の保有する株を買い取ったんです」

ルーズベルト「株を?」

政府の人1「はい。鉄鋼業界の株です」

ルーズベルト「なんだって?」

政府の人1「モルガン、やっちゃいましたね」

ルーズベルト「ああ」

政府の人1「とうとう鉄鋼業界の株に手を出しましたよ」

ルーズベルト「バカなやつだ」

政府の人1「あきらかに反トラスト法に触れる行為です」

ルーズベルト「そうだね。ホント、バカなやつだよ」

政府の人1「チャンスです。告発しましょう」

ルーズベルト「そんなバカなやつに、反トラスト法を適用するのは、もったいないな」

政府の人1「え?」

ルーズベルト「告発は、やめようか」

政府の人1「今、なんと?」

ルーズベルト「モルガン君を告発するのは、やめよう」

政府の人1「しかし、法律ではモルガンの行為はあきらかに……」

ルーズベルト「法律は置いておこう」

政府の人1「……」

ルーズベルト「モルガン君は金を武器に世界を征服しようとした」

政府の人1「はい」

ルーズベルト「おれは法を武器にしてそれに対抗してきた」

政府の人1「その通りです」

ルーズベルト「でも、モルガン君は今日、その武器を捨てた」

政府の人1「そうとも言えますね」

ルーズベルト「モルガン君らしくないけど、でも、少しうらやましいよ」

政府の人1「うらやましい?」

ルーズベルト「うん」

政府の人1「でも……」

ルーズベルト「?」

政府の人1「武器を持っているほうが安心できますよ」

ルーズベルト「武器を持たなくても安心できたら、もっといいよね」

政府の人1「それは、単なる理想です」

ルーズベルト「その理想を共有できる男を、おれは見つけたのかも」

1907年11月4日午前。

ルーズベルト大統領は、反トラスト法をモルガンに適用しないことを宣言した。

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