楠木正成のゆるい伝記 第8話 天皇の夢

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ここは金剛山。

楠木「ジャーン。ここがおれの秘密基地」

七郎「ここが?」

楠木「うん」

七郎「なんもないしょ」

楠木「いや、よく見て」

七郎「?」

楠木「湧き水あるしょ。湧き水」

七郎「そんだけ?」

楠木「基地のほかに、水のみ場もかねてるんだよね、ここ」

七郎「むしろただの水のみ場だけどね」

楠木「でも、ここに隠れてれば安全だよ」

七郎「そうかなぁ」

楠木「山奥だし、水には困んないし」

七郎「水があるってことは、人が集まるってことだよ」

楠木「あ、そっか」

七郎「すぐ見つかっちゃうよ」

楠木「じゃあ、隠そう」

七郎「え?」

楠木「湧き水の周りに壁作ってさ、隠そう」

そして。

楠木「壁、作ったのはいいけど……」

七郎「うん」

楠木「逆に目立つね」

七郎「うん」

楠木「あ、わかった」

七郎「なに?」

楠木「この壁を、さらに壁で隠そう」

そして。

楠木「やばい! どんどん目立ってく!」

七郎「なんか城みたくなっちゃったね」

こうして千早城(ちはやじょう)が完成した。

七郎「兄ちゃん。ケータイ鳴ってるよ」

楠木「あ、天皇さんからだ。ハイもしもし」

天皇「もしもし。天皇でーす。元気?」

楠木「元気っすよ。天皇さんは大丈夫なんすか?」

天皇「なにが?」

楠木「だって、捕われの身でしょ?」

天皇「そんなのね、もうサクッと脱出した」

楠木「え。で、今どこ?」

天皇「鳥取県の山」(船上山)

楠木「山?」

天皇「立てこもってるの。また反乱起こそうと思って」

楠木「反乱、好きっすね~」

天皇「反乱好きっていうか、権力欲しいんだよね」

楠木「ああ、なるほど」

天皇「知ってると思うけど、おれって勉強家でしょ」

楠木「いや、わかんないっすけど」

天皇「勉強家なんだよね」

楠木「はい」

天皇「でさ、中国の歴史とかも勉強してるわけさ」

楠木「すごいですね」

天皇「ちょっと、中国トークしていい?」

楠木「いいですよ」

天皇「中国にね、むかし、宋(そう)っていう国があったんだ」

楠木「そう」

天皇「その国、中国の歴史で一番かっこ良くてさ」

楠木「なんで?」

天皇「皇帝が、すげぇデカイ権力持ってるの」

楠木「ほぉ~」

天皇「いわゆる、専制君主制」

楠木「ふむふむ」

天皇「そのわりに汗臭くなくて、文化の香りプンプンだし」

後醍醐天皇は中国の宋学を学んでいた。

その影響で、天皇が絶大な権力を持って直接政治を行う体制を理想としていた。

天皇「ね。いい国でしょ、宋って」

楠木「いいっすね。わかんないけど」

天皇「おれ、日本をそんな国にしたいのさ」

楠木「おぉ~」

天皇「つまり、おれが専制君主になるってことね」

楠木「一人で権力を握るんですね?」

天皇「うん。だから幕府はジャマなの。権力者はおれだけでいいの」

楠木「なるほど」

天皇「というわけで、また反乱を起こすんだ」

楠木「エネルギッシュですね」

天皇「また手伝って」

楠木「反乱をですか?」

天皇「うん。英雄、目指してるんでしょ?」

楠木「でもこの前けっこうボロ負けだったんで……」

天皇「リベンジ、リベンジ」

楠木「……わかりました。やりましょう」

天皇「よし!」

楠木「今度こそ、英雄になりますよ」

西暦1333年。リベンジ開始。

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