楠木正成のゆるい伝記 第6話 『楠木死す』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0

楠木正成と七郎は、足利高氏に捕らえられた。

足利「きみたちはどこの何者だ」

楠木「えーと……」

足利「正直に言いたまえ」

楠木「じつは、ぼくたち、楠木正成の部下のものです」

足利「思ったとおりだ」

楠木「楠木正成は城の中で自害しました」

足利「やはりそうか」

楠木「僕的には、すごいショックで」

足利「そうだろう」

楠木「ショックのあまり、現実から逃れるため、井戸から出るごっこに没頭してたんです」

足利「井戸から出るごっこ?」

楠木「知らないんですか?」

足利「うむ」

楠木「今、すごく流行ってるじゃないですか」

足利「そうなのか?」

楠木「そんなんじゃ、時代においていかれてますよ」

足利「それは避けたい。他に今どんなことが流行ってるんだ?」

楠木「そうですね、たとえば……」

足利「うん」

楠木「手錠をはずすごっこです」

足利「おぉ。斬新だ」

楠木「あ、ちょうど僕、手錠してますね」

足利「うん」

楠木「さぁ、はずしてください」

足利「よし。……はずしたぞ」

楠木「これであなたも流行の最先端です」

足利「少し、嬉しいな」

楠木「あと流行ってるのが……」

足利「うん」

楠木「ひたすら目を閉じるごっこです」

足利「それも斬新だな。さすが今の若者」

楠木「やってみましょう」

足利「うん」

楠木「さ、目を閉じてください」

足利「こうか?」

楠木「そうです」

足利「じつに画期的な遊びだ。お金も手間もかからない」

しーん

足利「まだ、開けてはいけないのか?」

しーん

足利「そろそろ開けるぞ」

足利高氏は目を開けた。

足利「あれ。いない」

楠木正成は幕府軍の虚をつき、赤坂城からの脱出に成功した。

足利高氏と幕府の会話。

足利「報告します。反乱を鎮圧し、天皇を捕らえました」

幕府「ごくろう」

足利「楠木正成は、城を焼いて自害しました」

幕府「死体は確認した?」

足利「いえ」

幕府「楠木の死体、確認してないの?」

足利「おそらく城ごと燃えてしまったかと」

幕府「そっか」

足利「それに楠木は無名人ですから、だれも彼の顔を知りません」

幕府「じゃあ、確認のしようがないか」

足利「ただ、楠木の部下を捕らえて尋問したところ……」

幕府「うん」

足利「『楠木は自害した』と証言していました」

幕府「そんじゃ間違いないね」

足利「はい」

幕府「楠木は死んだってことで、オッケー」

足利「捕らえた天皇は、どうしましょう?」

幕府「本当は処刑しちゃいたいんだけど……」

足利「しかし、それは、ちょっと」

幕府「だよね。天皇を処刑するってのも、アレだよね」

足利「はい」

幕府「じゃあ、島流し」

足利「わかりました」

西暦1332年3月。

反乱の首謀者である後醍醐天皇は隠岐に流され、幽閉された。

ここは楠木正成のアパート。

楠木「反乱も終わっちゃったし、ヒマだね」

七郎「うん」

楠木「ビデオでも借りてくる?」

七郎「いいね」

レンタルビデオ店。

店員「ビデオのタイトルはこちらでよろしかったですか?」

楠木「はい」

店員「1週間のレンタルになります」

楠木「はい」

店員「会員証、お願いします」

楠木「はい」(会員証を差し出す)

店員「……あれ?」

楠木「ん」

店員「これ、楠木正成さんの会員証ですよね」

楠木「はい」

店員「ご本人ですか?」

楠木「失礼だな。本人ですよ。本人」

店員「……」

店員は幕府に通報した。

幕府「毎度ありがとうございます。こちら鎌倉幕府です」

店員「楠木正成が生きてました」

幕府「え?」

店員「反乱を起こした、あの人ですよ」

幕府「生きてるって?」

店員「はい」

幕府「マジ? どこにいる?」

店員「今頃は、自宅アパートでビデオを見てると思います」

幕府「住所は?」

店員「会員証によると……」

西暦1332年。楠木正成が生きている!のニュースは幕府に衝撃を与えた。

幕府軍はただちに楠木のアパートを包囲した。

第7話へ

楠木正成のゆるい伝記 トップへ戻る

関連記事コンテンツ



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

自己紹介

あーりーと申します。アクセスありがとうございます。布団でぬくぬくしながら本を読んだりスマホでテレビを見たり、のんびり過ごすのが好きです。

ブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へ

グロースファクター 毛髪再生