楠木正成のゆるい伝記 第4話 赤坂城の攻防

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第二基地(赤坂城)は、鎌倉幕府の大軍に包囲された。

七郎「兄ちゃん、やばいよ。囲まれたよ」

楠木「うん。日本で一番囲まれてるね」

七郎「敵の矢、がんがん飛んでくるんですけど」

楠木「ふふふ」

七郎「なにその笑い」

楠木「世に言う、不敵な笑みだよ」

七郎「いい作戦あるの?」

楠木「敵が弓矢なら、こっちは、これだ!」

七郎「おお、それは!」

楠木「鉄砲」

七郎「すげぇ」

楠木「しかも水鉄砲」

七郎「大人が持つもんじゃないよ」

楠木「対象年齢5歳以上。おれ、37歳。セーフ」

七郎「……」

楠木「ははは。冗談だよ」

七郎「こんなときに」

楠木「こんなときだからだよ」

七郎「なんだそれ」

楠木「どんな大ピンチのときでも、冗談のひとつくらい言えなきゃね」

七郎「うん。まあね」

楠木「じゃなきゃ、英雄になんてなれないよ」

七郎「それはいいけど、この大軍、どうやってやっつける?」

楠木「これを使う。きのう買った本」

七郎「なんの本?」

楠木「『必勝!戦術ハンドブック』1,400円。税別」

七郎「おぉ。お手軽に勝てそうだ!」

楠木「じゃあ、読むよ」

七郎「読んで読んで~」

楠木「必勝の法則その1」

七郎「うん」

楠木「自分より強い敵とは戦わないこと」

七郎「……」

楠木「……」

七郎「もう、戦っちゃってるね」

楠木「幕府軍はおれより弱い!」

七郎「今さら自分に言い聞かせても」

楠木「七郎」

七郎「はい」

楠木「お湯をわかせ」

七郎「は?」

楠木「お湯」

七郎「なんで?」

楠木「幕府軍を叩きのめす。こいつで」

七郎「その、水鉄砲で?」

楠木「いや、お湯鉄砲で」

赤坂城を包囲している足利高氏(幕府軍)のようす。

部下「あちっ。あちっ~」

足利「どうした?」

部下「お湯が降ってきます、お湯」

足利「お湯?」

部下「熱湯です。あちっ」

足利「むむ。本当だ。熱い。……うわ、あっちぃ!」

部下「ね」

足利「しまった!」

部下「どうしました?」

足利「『あっちぃ!』などというブロークンな言葉を口にしてしまったぁ!」

部下「大丈夫ですよ、そのくらい」

足利「もうエリートとしてやっていけない!」

部下「そんなことないです。落ち着いて」

足利「破滅だぁ!」

部下「とりあえず退却しましょう、ね」

足利「破滅だぁ!」

赤坂城の攻防戦において、楠木正成は熱湯を武器にするという奇策を用い、幕府軍を苦しめたという。

赤坂城のようす。

七郎「幕府軍、ちょっと撤退したね」

楠木「すげぇ、おれマジ天才かも」

七郎「一気に幕府軍に追い討ちをかけよう」

楠木「あわてるな。まずハンドブックを読もう」

七郎「そうだね」

楠木「必勝の法則その2」

七郎「なんて書いてあるの?」

楠木「つねに敵の意表をつくこと、だってさ」

七郎「意表っていってもねぇ」

楠木「七郎」

七郎「はい」

楠木「ライターある?」

七郎「あるよ。どうぞ」

楠木「さんきゅう」

七郎「あ、わかった。火攻め?」

楠木「甘~い」

七郎「違うのか」

楠木「まず新聞紙に火をつけて……」

七郎「やっぱ火攻めでしょ?」

楠木「床に捨てる。ポイ」

七郎「……」

楠木「……」

七郎「部屋、燃えてるけど大丈夫?」

楠木「普通、火攻めってさ、敵を攻撃するしょ」

七郎「あたりまえじゃん」

楠木「でもおれ今回、自分を攻撃してみた」

七郎「はぁ?」

楠木「どう? 意表ついてる?」

七郎「……」

西暦1331年10月。

楠木正成は自らの城に放火した。

赤坂城は炎上した。

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