豊臣秀吉のゆるい伝記 第19話 秀吉、城を持つ

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織田信長は報道陣に取り囲まれた。

記者「信長さん、ひとこと、ひとことお願いします」

信長「どいてください。通してください」

記者「将軍追放について批判が集まっていますが、ひとこと」

信長「あとで事務所をとおしてコメントしますから。通してください」

記者「将軍を追放するという暴挙に出た真意は?」

信長「ていうか、あれ、おれの仕業じゃないんで」

記者「じゃあ、誰の?」

信長「サルです、サル」

記者「実行犯は秀吉なんですか!?」

信長「おれは事後承諾しただけだから」

そのころ。

信長の義弟のようす。

義弟「お兄ちゃん、おれのこと怒ってるかな?」

部下16話で裏切っちゃいましたからね」

義弟「うん」

部下「あの人、キレたら何するかわかりませんもんねぇ」

義弟「つい先日も、将軍様を追放しちゃったんでしょ?」

部下「あ、そのことですけど、将軍様を追放したのは、秀吉らしいですよ」

義弟「え、そうなの?」

部下「信長さんは事後承諾しただけだって、今朝のワイドショーで言ってました」

義弟「秀吉って男もいかれてるね」

部下「天下の将軍様を追放するなんて、信長さん以上のブチキレ野郎ですよ」

義弟「本当に怖いのは秀吉だね」

部下「はい」

信長のようす。

信長「もー、サルぅ」

秀吉「はい」

信長「サルのせいでおれ、なまらマスコミに叩かれてるしょー」

秀吉「す、すいません」

信長「早く将軍様、連れ戻して来てやー」

秀吉「はい、探してみます」

と、言ったはいいが……

秀吉「将軍様、どこにいるんだろう」

兵士「心当たり、ないんですか?」

秀吉「ぜんぜん」

兵士「とりあえず近場からあたってみますか」

秀吉「近場って?」

兵士「一番近いのは、信長さんの義弟のうちですね」

秀吉「それって16話で裏切った人でしょ?」

兵士「はい」

秀吉「てことは、今、敵でしょ?」

兵士「だからこそ、将軍様が逃げ込んでる可能性があるんじゃないですか」

秀吉「でも、敵のところに行くのって緊張するなぁ」

兵士「使者として行けば大丈夫ですよ。さっそく今夜にでも」

その夜。

ここは信長の義弟の城。

玄関のチャイムが鳴った。

ピンポーン。

義弟「ん。今、ピンポン鳴んなかった?」

部下「鳴りましたね」

義弟「インターホン、出てみて」

部下「はい。……うわっ!」

義弟「どうした?」

部下「秀吉です」

義弟「えっ」

部下「秀吉が兵士をつれてやってきました」

義弟「攻めてきたってこと? どうしよう!」

部下「秀吉は信長さん以上のブチキレ野郎ですからね」

義弟「うん」

部下「ここは逆らわないほうが無難です」

義弟「だね。賛成。開城。降伏」

部下「はい。城を明け渡します」

驚いたのは秀吉だった。

秀吉「いきなり降伏された!」

兵士「どういうつもりでしょう」

秀吉「きょう最初の訪問者に降伏するって決めてたのかな?」

兵士「謎の遊び心ですね」

秀吉「ま、とりあえず、城、占拠しとくか」

兵士「はい」

西暦1573年8月28日。

秀吉は、浅井長政(信長の義弟)の城を占拠した。

こうして浅井長政は敗北した。

翌日。

信長「サル」

秀吉「はい」

信長「ゆうべ、裏切り者の義弟をやっつけてくれたんだって?」

秀吉「ええ、まあ、流れで」

信長「じゃあねぇ、ご褒美あげる」

秀吉「なんすか?」

信長「義弟の支配してた領土をあげる」

秀吉「マジっすか!」

秀吉は浅井長政の旧領(伊香・東浅井・坂田)を与えられ、長浜城を居城とした。

貧しい農民から身を起こした秀吉がついに12万石の領主となった。

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