豊臣秀吉のゆるい伝記 第6話 普請奉行

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秀吉は、信長から切腹を言い渡された。

そこへ一人の男が現れた。

柴田「ちょっと待ってください!」

信長の家臣、柴田勝家(しばたかついえ)である。

柴田「信長さん。その切腹、ちょっと待ったですよ」

信長「おぉ、柴田」

柴田「秀吉が信長さんを付けまわしてたのは、暗殺のためじゃありません」

信長「え?」

柴田「それは忠誠心のあかしです」

信長「忠誠心?」

柴田「秀吉は信長さんのお役に立ちたかったんですよ」

信長「どういうこと?」

柴田「信長さんの命令をパッと聞いてパッと実行できるように、そばに控えてたんですよ」

信長「おぉ、そうか」

柴田「立派な部下じゃないですか」

信長「疑って悪かったね、秀吉」

秀吉「あ、いえ……」

柴田「信長さん、ひとつ提案があります」

信長「なにさ、柴田」

柴田「秀吉のやる気をくんで、彼を出世させては?」

信長「出世?」

柴田「やる気のある人間は出世させるべきです」

信長「そうだね。でも、どのポストも空いてないしな……」

柴田「私のポストをひとつ、譲ります」

信長「え」

柴田「普請奉行のポストです」

信長「いいの?」

柴田「私は他にもいくつか役職がありますから」

信長「じゃあ秀吉、きみ今日から普請奉行ね」

秀吉「え♪ は、はい! がんばります!」

こうして秀吉は普請奉行になった。

普請奉行というのは、土木や建築を担当する奉行のことである。

しかしこれは柴田勝家の罠だった。

信長「きみも奉行になったんだから、異名つけないとね」

秀吉「異名?」

信長「かっこいいニックネームみたいなもん」

秀吉「いいですね」

信長「どんなのがいい?」

秀吉「頭がよさそうで、野生的なのがいいです」

信長「サル」

秀吉 Σ( ̄□ ̄; えっ!

秀吉はサルと呼ばれるようになった。

その夜。居酒屋。

カウンターにすわる秀吉と友達。

友達「信長に『辞めます』って言えた?」

秀吉「いや、言えんかった」

友達「ダメでしょ」

秀吉「それがね、ダメじゃないのさ」

友達「なんで?」

秀吉「なんか、いい展開になっちゃってさ」

友達「うん」

秀吉「おれ、普請奉行に出世しちゃった」

友達「うそぉ~?」

秀吉「ちょっと、呼んでみて」

友達「え」

秀吉「奉行って、呼んでみて」

友達「奉行」

秀吉「『お』付けてみて、『お』」

友達「お奉行」

秀吉「でへへ」

友達「にやけすぎだよ」

秀吉「やっべぇ、すげぇ気持ちいい」

友達「でも、よくそんな出世できたね」

秀吉「柴田さんが奉行のポスト、譲ってくれたの」

友達「いい人だね」

秀吉「うん」

翌日。

秀吉は柴田勝家から普請奉行の仕事の引継ぎをうけた。

勝家「――っていうのが、普請奉行のおもな仕事。質問は?」

秀吉「今んところは、まだ」

勝家「あ、それと……」

秀吉「はい」

勝家「これ、信長さんから大至急って言われてる仕事なんだけど」

秀吉「なんですか?」

勝家「城壁、直しておいて」

秀吉「城壁?」

勝家「この前の嵐でガラガラ~っと100メートルくらい壊れちゃってさ」

秀吉「ああ、見ました」

勝家「あれ、直しておいて。普請奉行の仕事だから」

秀吉「わかりました」

勝家「明日の朝までにお願いね」

秀吉「え? でもあれ、かなり豪快に壊れてますよね?」

勝家「うん」

秀吉「普通、1週間はかかりそうですけど……」

勝家「その仕事ね、信長さんから1週間前に言われたやつなの」

秀吉「は?」

勝家「でもおれ、すっかり忘れててさ。昨日、思い出したんだよね」

秀吉「……」

勝家「今の普請奉行は君だから、これ君の責任ね」

秀吉「そんな……」

勝家「明日の朝までにできなかったら、君、また切腹かもよ。じゃ!」

秀吉「あ、ちょっと」

その夜。いつもの居酒屋。

秀吉と友達の会話。

友達「はめられたね」

秀吉「やっぱり?」

友達「柴田っていう人に、うまいこと責任を押し付けられたんだよ」

秀吉「もしかしておれ、そのために命助けられたのかな?」

友達「そうだね」

秀吉「なんとかして明日の朝までに仕上げないと……」

友達「無理」

しかし、秀吉の常人ばなれした知恵がそれを可能にする。

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